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大生郷天満宮

茨城県常総市の大生郷天満宮(おおのごうてんまんぐう)は日本三天神、御廟天神です。

大生郷天満宮の由緒

社伝によりますと、菅原道真公の三男景行(かげゆき)公は、父の安否を尋ね九州大宰府を訪れました時、道真公自ら自分の姿を描き与え「われ死なば骨を背負うて諸国を遍歴せよ。自ら重うして動かざるあらば、地の勝景我意を得たるを知り、即ち墓を築くべし」と言われ、延喜三年(九〇三)二月二十五日に亡くなられました。

景行公は、遺言どおり遺骨を奉持し、家臣数人と共に諸国を巡ること二十有余年が過ぎ、常陸介(地方長官)として常陸国(茨城県)にやってきました景行公は、延長四年(九二六)に現在の真壁町羽鳥(はとり)に塚を築き、この地方の豪族源護・平良兼等と共に遺骨を納め、一旦お祀りしましたが、三年後延長七年(九二九)当時飯沼湖畔に浮かぶ島(現在地)を道真公が永遠にお鎮まりになる奥都城(墓)と定め、社殿を建て、弟等と共に羽鳥より遺骨を遷し、お祀りされたのが当天満宮です日本各地に道真公を祀る神社が一万余社あるといわれる中で、関東から東北にかけては最古の天満宮といわれ、又遺骨を御神体とし、遺族によってお祀りされたのは当天満宮だけであることなどから日本三天神の一社に数えられ、御廟天神ともいわれています。

大生郷天満宮のお祭り

お祭りの一部をご紹介します。

歳旦祭

1月1日
初詣・初祈祷が執り行われます。

年賀祭

1月6日
報恩寺より鏡餅の奉納があります。

初天神祭

1月25日
所願祈祷福だるまの授与。

梅花祭

2月25日
菅原道真公の御命日です。

例大祭

8月1日
別名「八朔祭」いう五穀豊穣を祈願します。

月並祭

毎月25日
月例の縁日です。

大生郷天満宮の宝物

代表的な宝物をご紹介します。

茨城県指定有形文化財 絹本著色 御神酒天神画

茨城県指定有形文化財
絹本着彩 御神酒天神画像

大生郷天満宮の「御神酒天神画像」は、不当におとしめられた菅原道真が、大宰府に左遷される船の中で、座る物も無く綱を巻いた円座に坐り、憤怒の為に一夜にして白髪になったという「怒り天神」(綱敷天神とも)の姿を画像化しています。この画像に酒を供えると顔が赤くなるとの伝承から、この名前が付いたと言われています。
天神画像には白梅が圧倒的に多い中、この画軸には紅梅が鮮やかに描かれていますが、道真が梅と共に好んだと伝わる松は描かれていません。道真と梅だけという単純な要素だけで表現されています。このことからも、大生郷天満宮の天神画像は、信仰に基づく「御廟意識」が強く根底にあることが解ります。
長野県上田市の常楽寺には、全国で2番目に古いといわれる、応永12年(1405)の年紀を持つ、右向きの同じ粉本 (下絵)を応用した天神画像があります。大生郷天満宮所蔵の「北野天神縁起絵巻」が、応永22年に描かれたものですから、この頃の制作かも知れません。
向かって左向きの画像が多く見られ、高麗縁(こうらいべり)の畳に座った画像も多く、いずれも束帯姿であり、天神画像も定型化しています。「東照権現画像」の徳川家康を抜き、束帯姿の道真をはめ込んでいる画像も見受けられます。「天神さま」への信仰は、道真と「天神」が結びついて一般化した素朴な信仰と言えるでしょう。
(解説:内藤典子)

茨城県指定有形文化財 絹本著色 御廟天神画

茨城県指定有形文化財
御廟天神画像

「宝珠」を「天神=菅原道真」に見立てて「御廟天神画像」として描かれた画像は、極めて珍しい全国唯一と言える画像でしょう。大生郷天満宮の特別な「廟所意識の真骨頂」と言える画像でもあります。
御廟天神画像の制作期は、道真を祟り神としない独特な「廟所縁起」からすると、大生郷天満宮の創成期に近く、鎌倉期まで遡ることができるかもしれません。
宝珠は五重塔や三重塔の上の飾り「相輪」の先端についていますが、塔の各層を貫く「心柱」の最下部には、仏舎利を入れた容器が納められているのが通例です。つまり、塔そのものが「廟」と考えられるわけです。
この宝珠を菅原道真にみたてた「御廟天神」は、塔と納められた仏舎利容器に代わる蓮華坐に抱かれています。四国八十八カ所の御札所の本尊の殆どが蓮華坐の上に居るように、道真が蓮華坐の上に居ることを表現している、と言えるでしょう。「白蓮華坐」は最高とされることも、描いた絵師の意識にはあったと思われます。四国八十八カ所の一番札所霊山寺の本尊も、白蓮華坐に坐す釈迦如来です。
この「御廟天神画像」の背景には、左右に白梅と松を描き、白蓮華坐の上の宝珠の上部には、かすかな薄紅と胡粉の下に二本の墨線が残り、宝珠を表しています。蓮華が今開いた如く薄紅をあしらい、宝珠を抱くような秀れた大和絵風の筆遣いが見られます。
(解説:内藤典子)

茨城県指定文化財 紙本着色 北野天神縁起絵巻

茨城県指定文化財
絹本着彩 北野天神縁起絵巻

室町時代の応永22年(1415)の制作が上巻末尾に明記された北野天神縁起絵巻で、上下2巻があります。詞書(ことばがき)は、冒頭が「王城鎮守神々多くましませど…」で始まり、成立がもっとも古い甲類の系譜を引いています。
内容は、生前の菅原道真の事績や、没後の怨霊としての伝承、北野天満宮に祀られる由縁、後の霊験利益など多岐にわたり、北野天神縁起絵巻の内容を忠実に踏襲する貴重な文化財といえます。この北野天神縁起絵巻には、「延長八年六月廿六日」に、不当に貶めた人々に道真が神罰を下した、「延長の例(ためし)」の場面が描かれています。
この北野天神縁起絵巻を納めてある箱の蓋裏には、宝暦6(1756)年に権大僧都・台梁(大生寺住持)が記した箱書があり、前年に北野天神縁起絵巻を補修し、服紗や箱を新調しています。また同じ箱に「天満宮縁起 一巻」が共に納められていましたが、80年後の天保7(1836)に代替わりした際に、その「天満宮縁起」が無くなっていたことが、割注状に記されています。その今日伝来していない「天満宮縁起」には、大生郷天満宮独自の縁起が書かれていたと考えられます。
『大生郷天満宮由緒記』や境内の刀研石の碑文は、道真の三男・景行が延長4年(926)に下向して羽鳥に塚を造り、道真の遺骨を埋葬した後、同7年に大生郷に改葬して、廟所として大生郷天満宮を創設したと伝えています。このような、怨霊になる前の道真の遺骨を埋葬し、廟所として創設されたという縁起を持つ天満宮は、他に類をみません。
(解説:内藤亮)

茨城県指定有形文化財 紙本著色 三十六歌仙絵

茨城県指定有形文化財
紙本着彩 三十六歌仙絵(元・扁額)

三十六歌仙は、平安時代に藤原公任が選んだ、三十六人の実在した歌人の尊称です。今日まで、三十六歌仙額の三十六人の歌人は、変わっていません。
三十六歌仙額の特徴は、(1)寺社等の神聖な場所に奉納する(2)定型化した額を、信仰に基づいて奉納する目的で造る(3)殆ど三十六歌仙の絵姿と和歌が書いてある(4)神仏を中央に左右一対としている(5)具体的な願文を書かない、この5つの要素になります。
従って、絵姿や絵巻の様に個人が愛蔵することはなく、絵馬(生馬えま・神馬)とは違い、身近な願い事は書きません。
三十六歌仙額の画像は、極めて定型化した「粉本」(ふんぽん・下絵)に基づいて描かれ、上部には紅白の色紙型や御簾などに和歌が書かれているのが一般的ですから、どこの三十六歌仙額も同じ、という見方が多くあります。三十六歌仙額は、掲額する場所の寸法に合わせて造られた事が、古い公家の日記には記されています。
大生郷天満宮の三十六歌仙額は、「多賀谷重経が鎧太刀と共に奉納した」との伝承から、焼失した社殿新造にあわせて奉納したのでしょう。三十六歌仙額を寺社に奉納する慣習は、阪神淡路大震災の鎮魂のために、また北野天満宮の修復完成を祝って、今日でも続けられています。
大生郷天満宮の全ての画面には、狩野松栄(1519~1592)の壺印(朱文鼎印)が捺され、この壺印は確定している狩野松栄の壺印と同じで、狩野派最古の三十六歌仙額と断定できます。
また、和歌の選者は三條西実枝(1511~1579)であり、(1)大生郷天満宮の三十六歌仙絵(2)北野天満宮の画帖(3)大宰府天満宮の巻子(4)高野山の御社の拝殿・山王院の額、と時代も場所も超えた4組の三十六歌仙額の和歌が、奇跡的に全て一致した(2亥分の1の確率・2の後に0が20個つく)、貴重な珍しい三十六歌仙絵(元・扁額)です。
(解説:内藤典子)

常総市指定文化財 絹本著色 十一面観音像

常総市指定文化財
絹本着彩 十一面観音像

南北朝末期に描かれたとされている仏画です。頭上には三段の化仏がみられ、右手に数珠を提げ、左手に紅蓮華を指した水瓶をもっています。背景と台座は淡い青緑、背景の下部は深い緑で、肉身の金泥、着衣の描線の切金が映え、独特な質感を与えているといえます。天神=道真の本地仏が十一面観音に定められていくのは、嘉承元年(1106)頃からといわれています。
道真の子孫・陳経が著した『菅家御伝記』に引用されている「安楽寺学頭安修奏状」には「太宰府安楽寺者、贈大相国菅原道真公葬送之地、十一面観世音大菩薩霊応之処也」とあり、太宰府の安楽寺(廃寺)は菅原道真を葬った地で、十一面観音が現れた土地とされています。
大生郷天満宮の十一面観音像も、道真の廟所を強く意識して制作されたと考えられます。そして道真の魂鎮めや成仏を祈念して、この仏画は大生郷天満宮に奉納されたのかもしれません。
この仏画には短冊状の添え状があり、日光東照宮や輪王寺(寛永寺)の門跡を務めていた公辨法親王の喜捨により、元禄13年(1700)に補修されたことがわかります。
(解説:内藤亮)

所在地
茨城県常総市
大生郷町1234番地

お問い合わせ
電話 / 0297-24-1739
FAX / 0297-24-1707
Email: info@tenmangu.or.jp